就活で苦労する人・失敗する人というのはだいたい決まっていて、
「企業研究のやり方」
が間違っています。
1.企業研究のやり方が間違っている
ものすごく雑に言えば、企業研究で大事なポイントは、
- その業界は他の業界とどこが違うのか?
- その会社は他の会社と何が違うのか?
という2点だけです。
就活って、やることたくさんあるじゃないですか。
だから、企業研究もムダなことを
- 前年度の営業利益
- 従業員数
- 自己資本比率
とか、そんなのはどうでも良いんですよ。
「何でウチの業界なんですか?」
「何で競合他社じゃなくて、ウチなんですか?」
に対する答えを用意するための作業が「企業研究」です。
2.実際に企業研究してみよう
例えば、今、
東洋経済 新卒の「3年内離職率」が低い300社ランキング
https://toyokeizai.net/articles/-/215685?page=4
をチラっと見てみたところ、
「アンリツ」
という会社が目に入ったので、これを例にとって、一緒にやってみましょうか。
手元にある就職四季報をパラパラ見てみると、
1895年創業の通信計測機器老舗。通信計測機器の世界大手で高速通信LTE端末の開発用計測器でもトップクラス。
と書いてありました。
どうやら
「通信計測機器メーカー」
のようです。
しかも、アンリツは会社説明会の資料をPDFで公開していました。
それを読んだところ、
- 1908年、公衆電話の元祖「共電式自動電話機」を製造
- 世界で初めて実用化された無線電話機「TYK式無線電話機」を開発
- アンリツの主力製品は「スマホの4G/LTEの基地局の電波がきちんと飛んでいるかを測定する計測機器」
だそうです。
まあ、平たく言えば
「スマホの4G/LTEの基地局の電波がきちんと飛んでいるかを測定する計測機器メーカー」
ということですね。
2.1.その業界は他の業界とどこが違うのか?
企業研究のポイントの1つ目、
「その業界は他の業界とどこが違うのか?」
を調べていきます。
アンリツは、
- 広くは「製造業」
- 狭くは「モバイル計測業界」
に入ることになりますが、
「製造業と非製造業の違い」
を調べてもしょうがないので、より大事なのは、
「モバイル計測業界と、その他の製造業界の違い」
でしょうね。
これを調べておかないと、
「君、メーカー志望って言うけど、ウチの業界以外にもメーカーはたくさんあるけど、何でウチなの?」
と聞かれたときに、
「あ、あ、それは、、」
となって、詰んでしまいます。笑
会社説明会のPDF資料などを読むと、
- モバイル計測機器は、「高付加価値な商品販売」と「その後の継続的な顧客サポートビジネス」が収益源
- モバイル計測機器の顧客はグローバル(売上の8割は海外)
- モバイル計測機器の顧客は、世界の通信サービスの主要企業
と書いてありました。
(ググったら出てきた↓)
アンリツ株式会社 会社説明会
https://dl.cdn-anritsu.com/ja-jp/about-anritsu/ir/other-materials/fy2014/141210.pdf
ちょっと調べただけですが、この情報からでも、
「君、メーカー志望って言うけど、ウチの業界以外にもメーカーはたくさんあるけど、何でウチなの?」
に対する答えは用意できますよね。
例えば、
「モバイル計測業界は、他の製造業と違って『売ったら終わり』ではなく「継続的な顧客サポート」が鍵だと伺った。継続的な顧客サポートには企業同士の誠実さがより問われると思うので、私の誠実さという強みを活かせると思い、この業界を志望した。」
「モバイル計測業界は、他の製造業と違って『薄利多売』ではなく「高付加価値な商品販売」だと伺った。高付加価値を生み出す源泉は、営業、開発、生産の協力があってこそだと思うので、私の「協調性」という強みを活かせると思い志望した。」
とかね。
2.2.その会社は他の会社と何が違うのか?
次に、企業研究のポイントの2つ目、
「その会社は他の会社と何が違うのか?」
をまず調べていきます。
これも、会社説明会のPDF資料などを読むと、
- 長期にわたり培われた信頼と、高度な技術の蓄積
- 有線、無線の双方の技術を保有
- キーデバイスを自社開発
- グローバルな開発、販売、サポート体制
- グローバルなキープレイヤーとの信頼関係
と書いてありました。
そして、アンリツの競合は、
- ローデ・アンド・シュワルツ(独) <非上場>
- キーサイト・テクノロジー(旧 アジレントテクノロジー)(米) <NYSE上場>
とのことでした。(これも、会社説明会の資料に書いてあった。笑)
ということで、より詳しく調べるために、
「アンリツとローデ・アンド・シュワルツは何が違うのか?」
「アンリツとキーサイト・テクノロジーは何が違うのか?」
を調べなければなりませんね。
これを調べておかないと、
「モバイル計測機器メーカーなら、ローデ・アンド・シュワルツの日本法人でも良いんじゃないの?何でウチなの?」
「モバイル計測機器メーカーなら、キーサイト・テクノロジーの日本法人でも良いんじゃないの?何でウチなの?」
と聞かれたときに、これまた、
「あ、あ、それは、、」
となって、詰んでしまいます。笑
「え、でも、会社の違いなんて、どうやって調べれば良いの?」
って思いますよね。
そんなときは、
「会社の沿革」
に注目してみてください。
(役員のおじさんが好きなのは、「社史」と「経営理念」ということを忘れないでください。笑)
ということで、
- アンリツ
- ローデ・アンド・シュワルツ
- キーサイト・テクノロジー
のそれぞれの沿革をざっと調べてみました。
「アンリツ」
憲法発布や帝国議会の開設など新たな日本の仕組みが調えられていった明治時代。文明開化の号令とともに、 鉄道や電信電話などの社会インフラも整備されていきました。逓信省が置かれ、新橋ステーションにも近く、 時代の新風が漲っていた京橋区木挽町。そこにアンリツの源流がありました。
(中略)
1895(明治28)年、逓信省灯台用品製造所に 勤めていた石黒慶三郎と杉山鎌太郎の二人が石杉社を創設し、
(中略)
当時の登記簿抄本には、『他人ノ為ニ電気其他諸種ノ機械ノ製造、内外国ニ於テ製造シタル機械及ビ材料ノ販売ト工事ノ請負』とあります。
アンリツ「120 年の足跡」
https://dl.cdn-anritsu.com/ja-jp/about-anritsu/corporate-information/track/footprint120.pdf
「ローデ・アンド・シュワルツ」
In the summer of 1933, Dr. Lothar Rohde and Dr. Hermann Schwarz rented an apartment located at Thierschstraße 36 in Munich, where they set up an electrotechnical laboratory. On November 17, “Physikalisch-Technisches Entwicklungslabor Dr. L. Rohde und Dr. H. Schwarz” (PTE) was registered at the Registration Court in Munich. Initially, the two founders’ plan was to develop measuring instruments exclusively on behalf of large electronics companies.
ROHDE & SCHWARZ Our history
https://www.careers.rohde-schwarz.com/en/our-history/
「キーサイト・テクノロジー」
1934年、スタンフォード大学の電気工学科を卒業したビル・ヒューレットとデイブ・パッカードは、コロラド州の山で2週間、キャンプをしながら釣りを楽しみました。
この旅行で、二人は考え方に類似点が多いことを実感し、親友となりました。 卒業後、ビルはスタンフォードとMITの大学院で研究を続け、デイブはニューヨーク州のゼネラル・エレクトリックに就職しました。
数年とたたないうちに、二人はスタンフォード大学の恩師フレッド・ターマン教授の奨めを受け、「起業に乗り出す(“make a run for it themselves”)」」ことを決意しました。
キーサイト・テクノロジーの歴史
https://about.keysight.com/ja/companyinfo/history/
まあ、これをそれぞれ一言でまとめると、
アンリツ…1895年に逓信省灯台用品製造所の石黒慶三郎と杉山鎌太郎が「明治時代の文明開化における、日本の電話網の拡充」を目的に「有線通信メーカー」として創設した会社
ローデ・アンド・シュワルツ…1933年にドイツイエナ大学のヘルマン・シュワルツ博士とロター・ローデ博士が「高周波セラミックス用計測器メーカー」として創設した会社
キーサイト・テクノロジー…1934年にスタンフォード大電気工学科卒のウィリアム・ヒューレットとデビッド・パッカードが「電子計測機器メーカー」として創設した会社
ということですね。
こうやって調べれば、
「なぜ他の2社ではなく、アンリツなのか?」
に対して答えられますよね。
例えば、
「競合他社が計測機器メーカーとしてスタートしているのに対し、アンリツは『明治時代の文明開化における、日本の電話網の拡充』という理念のもと、スタートしている。社会インフラを影で支えるというやりがいを感じられるのは、アンリツしかない。」
「競合他社が計測機器メーカーとして操業するより、30年も前に有線通信メーカーとしてスタートしている。業界で最も長い歴史を誇っているからこそ、『継続的な顧客サポート』を重視していると自分なりに考えた。だからこそ、私の誠実さを活かせるのは、アンリツだと思った。」
とかね。
こんな感じで、企業研究は「質問ありき」でやっていかないとキリがないですし、無駄にエネルギーを消耗してしまいます。
あと、役員のおじさんは経営理念が大好きなので、ついでに調べておくと良いですよ。
ついでに、アンリツの経営理念を調べたところ、
「誠と和を意欲をもって、“オリジナル&ハイレベル”な商品とサービスを提供し、安心・安全で豊かなグローバル社会の発展に貢献する」
でした。
経営理念はどうやって面接で使うかと言えば、「自己PR」のときに使うんですよ。
だいたい、自己PRというのは、
「私の強みは〜〜です。
なぜなら〜〜というエピソードがあったからです。」
という順番で話しますよね?
このときに例えば、
「私の強みは誠実さです。なぜなら、〜〜というエピソードがあるからです。御社の経営理念に“誠”という文字が入っているかと思いますが、私の誠実さは御社に貢献できるかと考えております。」
みたいなアピールをするのです。
「私の強みは誠実さです。なぜなら、〜〜というエピソードがあるからです。」
というところまでは、面接官も、
「はいはい、いつものパターンね。」
という感じでしょうが、
「御社の経営理念に“誠”という文字が入っているかと思いますが、」
と言った瞬間に、目が醒めると思います。
「経営理念⁉︎ こいつ面白いな。笑」
となること間違いなしです。
これが、営業です。
「え〜でも、そんなウソをつきたくない…」
とか罪悪感を持つ必要はないですよ。
就活は単なる営業なので。
自分の人格をさらけ出す場所ではないので、すべて本音を言う必要はないんです。
あなたもアルバイトをしていて、
「いらっしゃいませ〜」
「お気をつけて〜」
と言うと思いますが、別に心の底から言っているわけではないですよね?
就活もそういう感じで考えれば良いんですよ。
大事なことなので、もう一度言いますね。
企業研究とは、
- その業界は他の業界とどこが違うのか?
- その会社は他の会社と何が違うのか?
を調べることです。
- 前年度の営業利益
- 従業員数
- 自己資本比率
とか、そういうスペック的なところを覚えるのは時間のムダなので、やめましょう。
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